豆知識

漢方の目で見る
子どもの体と健康

小児神経症、てんかん

精神面も自立神経機能も未発達の子どもは、不安や恐怖、怒りなどの感情を爆発的に表現することがあります。 それが極端な形をとったものが夜泣き、憤怒けいれん(息止め発作、泣き入りひきつけ)、チックなどで、これらは小児心身症・小児神経症といわれる症状の一部です。
てんかんは神経症ではなく、明らかな脳波異常を伴う神経疾患です。

症状

・夜泣き
0歳から3歳までの子どもに多い。夜泣きの心理的背景として、昼間の刺激的な体験や生体リズムの乱れなどが指摘されています。 神経質・ヒステリー傾向の子どもに多くみられます。

・憤怒けいれん
激しく泣きわめいているうちに急に呼吸が停止し、唇が紫色(チアノーゼ)になり、全身がけいれんしたり、数分間意識を失うこともあります。 神経質な子どもに多く親が子どもに対し干渉しすぎることが原因の場合もありますが、ほとんどの場合原因不明です。

・チック
まばたきや、口をゆがめる、顔をしかめる、鼻や喉をならす、首を振る、肩を上げる、手首をピクつかせるなど、からだの一部の筋肉を意味も無く繰り返し動かします。

・てんかん
脳細胞の異常な電気的活動によって突発的におこるけいれん発作。発作時はてんかん波といわれる特有の脳波が出ます。

治療の視点

神経症は原因不明な場合が多く、その多くは精神的な要因が関与していると考えられます。 特に親子関係は未発達の子どもの心に大きな影響を与えます。 過保護でも厳格すぎるのも、子どもに干渉しすぎるという点では同じで、子どもにとってはストレスであり、また関心が薄すぎるのも欲求不満となって現れることがあるのです。親がまず、神経質にならずにのんびりした気持ちで子どもに接するように心がけることが、治療の第一歩になります。

▼西洋医学の眼
神経症の症状には、効果的な薬物療法はまだ確立されていません。両親へのカウンセリングや、子どものストレスをためないような生活を心がけます。 てんかんに関しては、抗けいれん薬で発作を予防します。

▼漢方治療の眼
感情の爆発、攻撃的で不安定な感情は、漢方的には「肝気」の高ぶりとして考えます。「肝気」とは、「癇が強い」「癇が高ぶる」の「癇」と同じで、興奮しやすい気の動きを意味します。 漢方治療は高ぶるものを抑えて足りないものは補う治療法ですから、このような肝気の高ぶりの治療は得意分野といえます。

よく使われる漢方処方

甘麦大棗湯:夜泣きけいれんによく効く。昼間何ごともないように過ごしているが、夜になると激しい夜泣きをするようなタイプに。

抑肝散:虚弱なタイプで、イライラしやすく、癇の高ぶる子どもに。親が神経質で子どもに干渉しすぎるような場合は、親子で服用する。夜泣き、憤怒けいれんで甘麦大棗湯が効かない症例に抑肝散が効果を発揮することがある。

柴胡加竜骨牡蛎湯:比較的元気だが、神経過敏でよく寝ぼける子どもに。

桂枝加竜骨牡蛎湯:顔色も優れず、食欲もないような虚弱タイプで、神経過敏でよく寝ぼける子どもに。

柴胡桂枝湯:てんかんに。抗けいれん薬と併用することで、抗けいれん薬の効果増強や減量をはかる

小児神経症、てんかんの漢方治療の考え方

小児神経症
比較的体力があり元気なタイプ 寝ぼけ、神経過敏 柴胡加竜骨牡蛎湯
虚弱なタイプ 神経過敏、寝ぼけ 桂枝加竜骨牡蛎湯
夜泣き、憤怒けいれん、神経過敏 甘麦大棗湯
夜泣き、憤怒けいれん、イライラ 抑肝散
てんかん
抗けいれん薬と併用して 柴胡桂枝湯